米国皮膚科学会のニキビ治療ガイドライン2024|何が変わった?日本との違いも解説
監修:太田多美 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 医学博士
著者:太田皮フ科クリニック
- ニキビ
- 尋常性ざ瘡
- ニキビ治療
- AAD
- 治療ガイドライン

米国皮膚科学会(AAD)は2024年にニキビ治療ガイドラインを更新しました。過酸化ベンゾイル、外用レチノイド、抗菌薬などの推奨内容と、日本のニキビ治療との共通点や違いを患者さん向けに解説します。
米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology:AAD)は、2016年以来となるニキビ治療ガイドラインの大幅な更新を行いました。
新しいガイドラインは2024年1月30日にオンラインで公表され、Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)2024年5月号に掲載されています。[1][2]
過酸化ベンゾイルや外用レチノイドといった従来から使われてきた治療に加え、新しい外用薬や全身治療についても検討されています。
ただし、AADは米国のガイドラインです。
米国で推奨されている薬が、日本でも同じように承認・保険適用されているとは限りません。
この記事では、AAD 2024ガイドラインのポイントと、日本でニキビ治療を受けるときに知っておきたい違いを整理します。
AADのニキビ治療ガイドラインはどう変わった?
AADの2024年ガイドラインは、2016年版を更新したものです。
成人、思春期および9歳以上の小児の尋常性ざ瘡を対象として、系統的レビューをもとに治療方法が評価されました。[1]
ガイドラインには、18件のエビデンスに基づく推奨と5件のGood Practice Statementがまとめられています。[1][2]
内容は、
- 外用治療
- 内服抗菌薬
- ホルモン治療
- 経口イソトレチノイン
- 注射治療
- 光・レーザーなどの治療
- 食事や補完療法
など幅広い治療方法を対象としています。
AAD 2024で強く推奨された主な治療
AADでは、治療効果と研究結果を評価して、いくつかの治療を「強く推奨」しています。[1][2]
過酸化ベンゾイル
過酸化ベンゾイル(BPO)は、ニキビに関係する細菌に対する抗菌作用を持ち、毛穴のつまりにも作用する外用薬です。[2][3]
AAD 2024では強く推奨されています。
日本でも過酸化ベンゾイルは尋常性ざ瘡の治療薬として使用されており、日本皮膚科学会のガイドラインでも重要な治療選択肢です。[4][5]
外用レチノイド
AADは外用レチノイドを強く推奨しています。[1][2]
例として、
- アダパレン
- トレチノイン
- タザロテン
- トリファロテン
などが挙げられています。[2]
外用レチノイドは、毛穴のつまりを改善し、ニキビができる過程に作用する薬です。
ただし、ここで注意したいのは、AADが挙げている薬剤すべてが日本でも尋常性ざ瘡に同じ条件で使用できるという意味ではないことです。
日本では国内の承認状況と日本皮膚科学会のガイドラインに基づいて薬剤を選択します。
日本の保険診療ではアダパレンが代表的な治療薬として使用されています。[4][6]
外用抗菌薬
クリンダマイシンなどの外用抗菌薬も、炎症性のニキビに対する治療として推奨されています。[1]
ただし、2024年ガイドラインで特に重視されているのが薬剤耐性への配慮です。
抗菌薬を使用する場合には、過酸化ベンゾイルなどを組み合わせ、抗菌薬だけを漫然と使用しないことが重要とされています。[1][2]
これは日本のニキビ治療でも重要な考え方です。[4]
ドキシサイクリンなどの内服抗菌薬
AAD 2024では、経口ドキシサイクリンが強く推奨されています。[1]
炎症が強いニキビでは、外用薬だけでなく内服抗菌薬を組み合わせることがあります。
一方、AADは全身抗菌薬を可能な限り限定して使用することも推奨しています。[1]
つまり、
抗菌薬を長く使い続けることを推奨しているわけではありません。
必要な時期に使用し、過酸化ベンゾイルなどの外用治療を組み合わせることが重要です。
複数の作用を持つ薬を組み合わせる
AAD 2024では、異なる作用を持つ外用薬を組み合わせる考え方が重視されています。[1][2]
例えば、
- 過酸化ベンゾイル
- 外用レチノイド
- 外用抗菌薬
などを症状に応じて組み合わせます。
ニキビは、
- 毛穴のつまり
- 皮脂
- C. acnes
- 炎症
など複数の要因が関わる皮膚疾患です。
そのため、一つの作用だけではなく、異なる仕組みに作用する治療を組み合わせる考え方が取り入れられています。
重症ニキビではイソトレチノインも強く推奨
AAD 2024で重要な変更点の一つが、経口イソトレチノインの位置づけです。
AADは、
- 重症のニキビ
- 瘢痕を生じているニキビ
- 心理社会的な負担を伴うニキビ
- 標準的な外用・内服治療で十分な効果が得られないニキビ
に対して、経口イソトレチノインを強く推奨しています。[1]
ただし、これは米国におけるガイドライン上の推奨です。
米国の推奨内容をそのまま日本国内での承認状況や保険診療と同じものとして解釈することはできません。
日本で治療を受ける場合には、日本国内の承認状況や安全性情報を確認したうえで判断する必要があります。
条件付きで推奨された治療もある
すべての治療が「強く推奨」されたわけではありません。
AAD 2024では、条件付き推奨として、
- クラスコテロン外用
- サリチル酸外用
- アゼライン酸外用
- ミノサイクリン内服
- サレサイクリン内服
- 低用量経口避妊薬
- スピロノラクトン
などが挙げられています。[1][2]
「条件付き推奨」とは、効果がないという意味ではありません。
患者さんの状態や希望、治療のメリット・デメリットなどによって、適した選択が異なることを意味します。
抗菌薬の使い方も重要なポイント
AAD 2024では、薬剤耐性を防ぐために抗菌薬の使い方についてGood Practice Statementを示しています。[1]
主な考え方は、
- 全身抗菌薬を必要以上に長期間使用しない
- 抗菌薬と過酸化ベンゾイルなどを組み合わせる
- 異なる作用機序の外用治療を組み合わせる
というものです。
ニキビ治療では「どの薬を使うか」だけでなく、どのように組み合わせ、いつまで使用するかも重要です。
日本のニキビ治療とは何が違う?
AAD 2024は米国の診療環境を前提に作られています。
そのため、掲載されている治療薬をそのまま日本の標準治療一覧として利用することはできません。
日本では、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」が現在公開されている主要な診療ガイドラインです。[4]
日本皮膚科学会はガイドライン作成にあたり、日本で未承認の薬剤については原則として推奨対象に採用していません。[4]
一方で、日米のガイドラインには共通点もあります。
日本でも、
- アダパレン
- 過酸化ベンゾイル
- アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合剤
- 抗菌薬
などがニキビ治療で重要な位置を占めています。[4]
つまりAAD 2024によって治療がまったく別物になったというより、従来からの標準治療を基礎に、新しい薬剤や抗菌薬の適正使用などを含めてエビデンスを更新したと理解する方が適切です。
太田皮フ科クリニックではニキビの保険診療を行っています
太田皮フ科クリニックでは、尋常性ざ瘡を一般皮膚科で診療しています。[7]
公式サイトでは保険診療として、
- アダパレン
- 過酸化ベンゾイル
- 抗菌薬外用剤
- 内服抗菌薬
- 面皰圧出
などを案内しています。[7]
実際にどの治療が適しているかは、白ニキビ・赤ニキビなどの皮疹の種類、炎症の程度、数、これまでの治療などを確認して判断します。
AADのガイドラインは米国の診療指針です。日本では国内の承認状況や日本皮膚科学会のガイドラインを踏まえて治療を選びます。
ニキビが続いている方は、ご自身に合う治療について皮膚科でご相談ください。
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※一般診察は当日の順番受付です。混雑状況などによってWeb受付時間が短縮・休止される場合があります。[8]
よくある質問
AAD 2024の治療は日本でもすべて受けられますか?
いいえ。
AAD 2024は米国の医療制度やFDA承認薬を前提としたガイドラインです。[1]
日本では、国内の承認状況や日本皮膚科学会のガイドラインに基づいて治療を選択します。
そのため、AADで紹介されている薬剤すべてが、日本で尋常性ざ瘡に承認・保険適用されているとは限りません。
日本と米国で共通するニキビ治療はありますか?
あります。
特に、
- 過酸化ベンゾイル
- アダパレンなどの外用治療
- 抗菌薬
- 複数の作用を持つ薬剤の併用
- 抗菌薬の長期使用を避ける考え方
などには共通点があります。[1][4]
最新ガイドラインなら米国の方を優先した方がよいですか?
一概には言えません。
AAD 2024は重要な最新資料ですが、日本で診療を受ける場合には、日本国内の承認状況、日本皮膚科学会のガイドライン、患者さん個人の状態を合わせて判断する必要があります。
「新しいガイドラインだから、そこに載っている薬を使えばよい」というものではありません。
まとめ
米国皮膚科学会は2024年に、2016年以来となるニキビ治療ガイドラインの更新を行いました。
強く推奨されている主な治療には、
- 過酸化ベンゾイル
- 外用レチノイド
- 外用抗菌薬
- それらの配合・併用治療
- 経口ドキシサイクリン
- 条件を満たす患者への経口イソトレチノイン
などがあります。[1][2]
また、抗菌薬を必要以上に長期間使用せず、過酸化ベンゾイルなどを組み合わせる薬剤耐性対策も重要なポイントです。
一方、AADは米国のガイドラインです。
日本では日本皮膚科学会のガイドラインと国内の医薬品承認状況を踏まえ、一人ひとりの症状に合わせて治療を選択することが重要です。